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大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)788号 判決

原告 見市録和

被告 西岡久男

〈ほか二名〉

主文

原告が被告西岡に賃貸している別紙物件目録(一)記載の建物の賃料は昭和四四年二月一日以降一ヶ月金一九〇〇円

原告が被告岡本に賃貸している別紙物件目録(二)の建物の賃料は昭和四四年二月一日以降一ヶ月金一四〇〇円

原告が被告沢井に賃貸している別紙物件目録(三)の建物の賃料は昭和四四年二月一日以降一ヶ月金一三〇〇円

であることを確認する。

原告その余の請求は棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告が陳述したものとみなされた訴状によれば、

「被告西岡は原告より賃借する別紙物件目録(一)記載の建物についての賃料は昭和四四年二月一日以降一ヶ月に付金三五〇〇円

被告岡本は原告より賃借する別紙目録記載(二)の建物についての賃料は昭和四四年二月一日以降一ヶ月に付金三三〇〇円

被告沢井は原告より賃借する別紙目録記載の(三)の建物についての賃料は一ヶ月に付金三二〇〇円

であることを夫々確認せよ。

訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決を求め、その請求の原因として

一、原告は昭和三五年四月一五日被相続人見市惣太郎より別紙物件目録(一)ないし(三)の建物を相続した。

二、惣太郎は昭和一八年四月一日頃より別紙目録記載(一)の建物を被告西岡に、同(二)の建物を被告岡本に、同(三)の建物を被告沢井に各賃貸して来り、原告は相続により右賃貸人たる地位を承継した。

三、そして右賃料は幾度か家賃改定の結果昭和三二年一一月現在において被告西岡の分は月額一五五〇円、被告岡本の分は月額金一、一五〇円、被告沢井の分は月額金一、〇五〇円となったが、以来約一〇年間家賃の改定なく、右賃料額はその後の諸税の負担の増加地価の高騰等により賃料として不相当となったので、原告は昭和四一年八月一〇日各被告に対し次のとおり賃料の増額請求を通知した。

被告西岡に対しては月額金三五〇〇円

被告岡本に対しては月額金三三〇〇円

被告沢井に対しては月額金三二〇〇円

ところが被告らはいずれもこれを承諾せずしてこれを拒否してきた。

四、なお本件各家屋は三戸共床面積は各六一・七五m2(一八坪六八)あり近隣の土地の価格及び地代家屋の広さ等よりみて、現在三戸共何れも賃料は月額金五〇〇〇円以上のものである。

五、よって、やむなく、被告らに対し各右月額賃料額が昭和四四年二月一日以降右原告の右増額請求額どおりの割合であることの確認を求める。」と述べ、

被告らは、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求め、答弁として

一、被告らが各自原告主張の建物を原告より賃借していること(但し、床面積は争う。本件各家屋は四戸建の内の一戸で各自の賃借床面積は四六・三四m2(一四・〇二坪))、原告の昭和四一年八月一〇日の増額請求当時の被告らの従前賃料額が夫々原告主張のとおりであること、原告主張の日時頃原告主張額について賃料の増額請求がなされたこと、被告らがいづれもこれを拒否したことは争はないがその余の原告主張事実はこれを争う。

二、被告西岡が本件(一)の建物を賃借したのは昭和一八年四月、被告岡本が本件(二)建物を賃借したのは昭和二五年一〇月被告沢井が本件(三)の建物を賃借したのは昭和一八年八月である。

三、原告主張の増額請求は失当である。

(イ)本件各賃借建物は荒壁のままであり、また水道は各戸専用でなく、水道栓は一筒の共同水道しかなく、また各戸には台所、炊事場の設備なく、各戸に各被告らの負担において水道瓦斯を設備したものであり、畳、建具は被告らの自己負担によるものである。

また建物の固定資産税は減価償却の関係で負担増になっていないし、その敷地は原告所有地でなく、その地代も四戸で一ヶ月五〇〇円であったが現在一〇〇〇円となったにすぎず、一戸当り金一二五円の地代の増加が見込まれるのみである。

(ロ)被告らは原告の増額請求を失当とし、従前額の提供をしたが原告は、増額金額にあらざれば受領出来ぬと受領を拒否したので、これを弁済供託し、爾後の賃料についてもこれを弁済供託をしてきたそして昭和四四年一月分よりは各約二割増で

被告西岡の分は月額一九〇〇円

被告岡本の分は月額一四〇〇円

被告沢井の分は月額一三〇〇円

の各割合で弁済供託をしている。右のとおりであるから原告の確認請求の始期昭和四四年二月分以降については右供託額までは増額を認めるが右限度をこえる賃料増額請求は失当である。証拠≪省略≫

理由

一、原告が別紙目録(一)の家屋を被告西岡に、同目録(二)の家屋を被告岡本に、同目録(三)の家屋を被告沢井に各賃貸中であること。

右各賃料は原告主張の従前賃料額であったところ、原告は昭和四一年八月一〇日右各従前賃料をそれぞれ原告主張の額に増額する旨通知したこと、被告らは各右増額に応じなかったことは当事者間に争がない。

二、そこで原告に右賃料増額請求の理由があったかどうかについて考えるに原告は右増額請求権の発生要件及びその請求額の正当性を主張するが、何らの立証をせずこれを認めるに足る証拠はない。然らば右原告の右増額請求は右増額請求をなした時点においてはいずれも理由ないものといわねばならない。

三、ところで原告は右増額請求に基き本訴(昭和四四年二月一九日受付)において昭和四四年二月一日以降の賃料の確定を求めているところ、被告らは昭和四四年二月一日以降の賃料については

被告西岡において月額一九〇〇円

被告岡本において月額一四〇〇円

被告沢井において月額一三〇〇円

を各相当として右額により弁済供託していることが、≪証拠省略≫を総合してこれを認めることが出来、他に右認定を左右する証拠はない。

そして右認定の如き事実関係の下においては被告らの各自の右認容額を以て相当賃料額と認定するを相当とする。

してみれば、原告の本件賃料確認請求中、被告西岡に対しては月額一九〇〇円、被告岡本に対しては月額一四〇〇円、被告沢井に対しては月額一三〇〇円の各限度において正当であるからこれを認容し、その余は棄却すべく、訴訟費用の負担につき民訴法第八九条、九二条但書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 増田幸次郎)

〈以下省略〉

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